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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)2943号 判決

原告 武内義行

被告 社団法人 日本出版協会

主文

原告が被告協会の会員であること、別紙目録(一)記載の伊藤隆文外五〇名が被告協会の評議員でないこと、及び別紙目録(二)記載の伊藤隆文外一三名が被告協会の理事でないこと、をいずれも確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者の申立

一、原告

主文同旨の判決を求める。

二、被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二、当事者の主張

一、原告

(原告が被告協会の会員であることの確認)

(一) 被告協会は昭和二一年五月一五日、出版事業の健全な発達とその文化的使命達成並に会員相互の親睦を図る目的で設立された社団法人であり、原告はその頃入会申込をして被告協会の会員となつた。

(二) ところで、被告協会は昭和三二年二月二六日の評議員会で、原告を「会員として不適当な者である」として被告協会員中から除名する旨の決議をした。

しかし、右除名決議は、その決議に参加した者がいずれも評議員たる地位を有しない者であるから、それは適法な評議員会における決議とはいえず無効であり、それによつて原告は会員資格を失わない。

(三) 右決議の参加者はいずれも、昭和三〇年八月五日の臨時会員総会において成立した評議員選出規程の改正規定に基いて、同月一五日評議員に選出されたのであるが、それによつて同人等がその地位を取得しない理由は、右選出規程の改正手続が次のとおり無効なため、無効な規定に基く選出となるからである。

即ち、評議員の選出については、定款第一〇条に「評議員は別に定める評議員選出規程によつてこれを選出する」旨規定され、その選出規程第五条には「選挙は直接投票による。但し予め一定の地域を定めて郵便投票によることができる」旨定められているのに、被告協会は昭和三〇年八月五日の臨時会員総会において、緊急動議として「昭和三〇年度に限り直接投票によらず評議員詮衡委員会の詮衡によつて評議員を選出することができる」旨の評議員選出規程改正案を上程可決した。

しかしながら、定款第二二条によれば、諸規程の制定及び変更については評議員会において審議し議決する旨定められており右改正案は明らかに定款第二二条の諸規程の変更に当るから、右改正案を可決するには評議員会の審議及び議決を経なければならない。しかるに右改正案は評議員会の審議及び議決を経ることなく、直接会員総会に上程可決されたものであるから、右規定の改正手続は定款に違反し無効である。

(被告の主張――原告の会員資格喪失についての――に対する反対主張)

(四) 原告が被告主張の様に入会した当時政経時潮社という商号で営んでいた個人営業を、昭和二三年三月三日株式会社組織(株式会社政経時潮社)に改めて原告がその代表取締役になつたことは認めるが、右組織変更によつて当然会員資格を失うものではない。

右組織変更後、右法人が会員となつても、原告個人は依然として法人と共に会員である。

(五) また、被告協会が昭和三四年四月二八日の評議員会で、被告主張の理由によつて、原告の資格喪失決議をしたことは認める。しかし、原告が昭和三一年度以降の会費を納めていないのは被告協会の受領遅滞に基くものであるから、右資格喪失決議はその理由を欠き無効である。

さらに、昭和三四年四月二八日の評議員会における資格喪失の決議は、後記の理由で、評議員たる地位を有しない別紙目録(一)記載の伊藤隆文外五〇名(以下目録(一)記載の者と称す)の者が出席してなしたものであるから適法な評議員会の決議とはいえず無効であり、それによつて原告は会員資格を失わない。

(目録(一)記載の者が評議員でないことの確認)

(六) 目録(一)記載の者は昭和三二年一一月二〇日の評議員選挙のための会員総会において評議員に選出されたが、右総会の決議は次の理由で無効であるから、それによつて同人等は評議員たる地位を取得しない。

右総会は、風間歳次郎が理事長名義で招集したのであるが、同人には総会の招集権限がなかつたから、かかる者が招集した総会は総会としての効力がないためである。

(七) 右風間に招集権限のない理由は、定款第一六条によれば「会員総会は理事長が招集する」ことになつているのに、右風間は理事ですらなかつたからである。それは右風間を理事に選任した昭和三〇年九月二日の評議員会の決議が、次のとおり無効なためである。

(イ) 即ち、右評議員会の決議は、その決議に参加した評議員がすべて、前記の様に無効な改正後の評議員選出規程に基く詮衡委員会の詮衡によつて選出された者であるから、それは評議員でないものの決議であつて適法な評議員会における決議とはいえず無効である。

(ロ) さらに、評議員会は招集権者である理事長(定款第一六条)が、招集目的を明示して招集することになつているのに、右昭和三〇年九月二日の評議員会は理事長でも会長でもない吉田聖一が評議員懇談会世話人代表吉田聖一名義で新選出評議員の懇談会を開催する旨の通知をし、それによつて招集された会合をそのままきりかえた評議員会であるから、そこにおける決議は招集権限を有するものによつて適式に招集された評議員会の決議といえない点においても無効である。

(ハ) その上、定款第一二条によれば「理事は評議員会において評議員の中からこれを選出する但し必要がある場合には評議員外からも選出することができる」旨規定されているのに、右評議員会において理事に選任された右風間等はいずれも無効な改正後の評議員選出規程に基く手続によつて選出されたもので、評議員たる地位を有しないものであり、しかも定款第一二条の例外規程によつて評議員外からのみ理事を選任しなければならない様な事情は全くなかつたのであるから、右評議員会における理事選任決議は被選資格を有しない者を理事に選任した点においても無効である。

(目録(二)記載の者が理事でないことの確認)

(八) また被告協会は、昭和三四年三月一〇日の評議員会において、別紙目録(二)記載の伊藤隆文外一三名(以下目録(二)記載の者と称す)を被告協会の理事に選任する旨の決議をし、その決議に基き同年四月九日その旨の登記手続をした。

しかし、右評議員会における理事選任決議は、前記の様な理由で評議員たる地位を有しない目録(一)記載の者が出席してなしたものであるから、適法な評議員会における決議とはいえず無効であり、それによつては目録(二)記載の者は理事たる地位を取得しない。

二、被告の主張

(原告除名決議の効力)

(一) 原告主張の(一)の事実は、全部認める。(二)の事実中、昭和三二年二月二六日の評議員会で、原告を「会員として不適当な者である」として除名する旨の決議をしたことは認める。右決議に参加した評議員は、すべて評議員たる地位を有する者であり、右決議は、理事会が原告を「会員として不適当な者である」と認めたことに基き、定款第七条の規程に従いなしたもので有効である。よつて原告は右決議により会員資格を失つた。

(二) 原告の主張(三)の事実中、原告の除名決議に参加した評議員が、原告の主張の日に、その主張の様な改正後の評議員選出規程に基いて選出された者であること、定款第二二条に原告主張の様な規定があること、及び昭和三〇年八月五日の臨時会員総会において緊急動議として、原告主張の様な評議員選出規程の改正案が上程可決されたことは認めるが、右改正手続は違法でない。即ち、右改正案は、臨時会員総会当日、当時の理事長石井満が招集した評議員会の決議に基いて、定款第二〇条第四号の規定(会員総会は評議員会が会員総会に附議するように決議した事項を議決する。)に従い会員総会に附議可決されたものであるから、定款に従い適法に成立したものである。従つて原告主張の昭和三二年二月二六日の評議員会に出席した評議員は適法にその地位を有している。

(組織変更に基く資格喪失の主張)

(三) 仮りに、右除名決議が無効であつても、原告は会員となつた当時、政経時潮社という商号で出版の個人営業を営んでいたが、昭和二三年三月三日それを株式会社組織(株式会社政経時潮社)に改め原告がその代表取締役になつた。従つて、同日以後原告は個人として出版事業を行わなくなつたので、それによつて当然に会員資格を失つて退会し、それと同時に株式会社政経時潮社が入会して会員資格を取得した。よつて原告はそれ以来会員でなくなつた。

(資格喪失決議に基く資格喪失の主張)

(四) 仮りに、右の組織変更による当然の資格喪失についての主張が、理由がないとしても、原告は昭和三一年度以降の会費を滞納しているので、昭和三四年四月二八日の評議員会において、会員規程第一一条第三号に基き、原告の会員資格喪失の決議をしたから、原告はそれによつて会員資格を失つた。

右原告の滞納会費について被告協会に受領遅滞はない。

(目録(一)記載の者の評議員資格について)

(五) 原告主張の(六)の事実中、目録(一)記載の者が原告主張の総会において選出された者であること、及び右総会が理事長風間歳次郎名義で招集されたものであることは認める。右風間は真実の理事長であつたから総会の招集権者であり、従つて、右会員総会において評議員に選出された者はすべて評議員たる地位を取得する。

(六) 原告主張の(七)の事実中、右風間が理事に選任されたのは昭和三〇年九月二日の評議員会の決議に基くものであることは認めるが、右選任決議は有効であるから、それによつて右風間は理事たる地位を取得する。(七)(イ)の事実中、昭和三〇年九月二日の理事選任決議に参加した評議員が、すべて改正後の評議員選出規程に基く手続によつて選出された者であることは認めるが、右選出規程の改正が有効である以上それに基く手続によつて選出された者は、すべて評議員たる地位を取得し、それらの者による決議は有効である。(七)(ロ)の事実中、昭和三〇年九月二日の評議員会が、原告の主張する様に、評議員懇談会世話人代表吉田聖一名義で出された、「新選出評議員の懇談会を開催する」旨の通知によつて招集された会合を、そのままきりかえたものであることは認めるが、右招集手続に違法はなく、そこにおける決議は有効である。(七)(ハ)の事実中、昭和三〇年九月二日の評議員会において理事に選任された右風間等が、すべて改正後の評議員選出規程に基く手続によつて、選出された評議員であつたことは認めるが、右改正規程は有効であり同人等は評議員たる地位を有していたから、理事選任の被選資格者であつた。

(目録(二)記載の者の理事資格)

(七) 原告主張の(八)の事実中、昭和三四年三月一〇日の評議員会において、目録(二)記載の者を理事に選任する旨の決議をし、それに基いてその旨の登記手続をしたこと、及び右理事選任決議に参加した評議員が、目録(一)記載の者であることは認めるが、同人等はすべて評議員たる地位を有していたから、その決議は有効であり、それによつて目録(二)記載の者は理事たる地位を取得する。

第三、証拠関係

一、原告 甲第一ないし九号証を提出し、証人石井満及び窪田明治こと窪田範治の尋問を求め、原告本人尋問の結果を援用した。

二、被告 乙第一ないし一〇号証、第一一号証の一、二、第一二ないし一六号証を提出し、証人上本将及び吉田聖一の尋問を求めた。

三、書証の認否

(一)  原告 乙号証の成立は全部認める。

(二)  被告 甲号証の成立は全部認める。(但し甲第七号証については原本の存在も認める。)

理由

(原告の会員資格の取得)

一、被告協会が原告主張の様な目的をもつて、昭和二一年五月一五日設立された社団法人であること、及び原告がその頃入会申込をして被告協会の会員となつたことは当事者間に争がない。

(組織変更による当然の資格喪失について)

二、そこで、会員資格喪失の被告の主張について検討する。

原告が、被告協会に入会した当時、個人で経営していた出版事業を、昭和二三年三月三日株式会社組織(株式会社政経時潮社)に改め、その代表取締役になつたことは当事者間に争がなく、成立に争のない甲第一号証の定款第五条及び成立に争のない甲第三号証の会員規程第二条によれば、被告協会の会員資格は書籍、雑誌その他の出版物を発売するために継続して業務を行う個人法人又は団体である正会員と、主として所属団体員に対し、出版物を頒布する為に継続して発行業務を行う団体である準会員との二種に限定されていることが認められるが、定款及び会員規程には当初会員として入会した個人が、個人として出版事業を行わなくなつた場合、これによつて当然会員資格を喪失して退会するものと解しうる様な規程はなく会員規定(甲第三号証)第一一条によれば、かかる者といえども退会届を出して退会しない限り依然会員資格を有するものと解しうるし、株式会社政経時潮社が設立当時入会申込をしたこと及び原告が退会の意思表示をしたことを認めるに足る何等の証拠もない。

もつとも、成立に争のない乙第一一号証の一、一(入会申込書)には、会員の名称又は商号欄に政経時潮社、事業主又は代表者氏名欄に武内義行との記載があるが、商号政経時潮社の肩書に赤インクで株式会社の文字が附加され、また組織欄(個人、会社又は組合等の別)には、もと個人の記入されていたのを抹消して赤インクで二三、三、三株式と訂正し、かつ会員番号も訂正されているので、一見株式会社政経時潮社が入会申込をしたかの様に思われる。しかし同号証の入会年月日欄には、当初原告が個人として申込をした日時がそのまま表示されていて、株式会社政経時潮社設立後の日時は記載されていないのみならず、弁論の全趣旨によれば、原告は個人経営時代にも政経時潮社という商号を用いていたところから、入会申込をするに当り政経時潮社こと武内義行という趣旨で会員名称欄に政経時潮社、事業主氏名欄に武内義行と記載したものであるが、昭和二三年三月三日株式会社組織に改めたのでその旨を被告協会に通知したため、被告協会において商号の表示の正確を期する意味において前記の様に加筆したに止まるのであつて、原告の退会及び株式会社政経時潮社の入会の意思表示をしたことによる訂正ないし挿入ではないこと、及び訂正された会員番号は株式会社たる会員を表示するものではないことが明らかであるから、乙第一一号証の一、二によつては原告が被告協会を退会したことを認めるに足りない。よつてこの点の被告の主張は理由がない。

(評議員選出規程の改正に関する決議の努力)

三、ところで、右の抗弁以外の原、被告の主張の理由の有無は、いずれも昭和三〇年八月五日の臨時会員総会における、評議員選出規程の改正に関する決議の効力の有無に帰着するので、次に右決議の効力について検討する。

昭和三〇年八月五日被告協会の臨時会員総会が招集され、右総会において緊急動議として「昭和三〇年度に限り直接投票によらず評議員詮衡委員会の詮衡によつて評議員を選出することができる」旨の評議員選出規程の改正案が上程可決されたことは当事者間に争なく、甲第一号証の定款第一〇条に「評議員は別に定める評議員選出規程によつてこれを選出する」旨定められ、成立に争ない甲第二号証の評議員選出規程第五条に「選挙は直接投票による。但し予め一定の地域を定めて郵便投票によることができる」旨定められていることが認められる。

ところで社団法人の社員総会は社団法人における最高の議決機関で、法人の組織、管理等に関するあらゆる事項について決議しうるのを原則とするけれども、その専権に属する事項例えば定款の変更(民法第三八条)解散の決議(民法第六八条)等を除いては、定款の定めによつてこれを他の機関に委任することを妨げるものではなく、定款をもつて或る事項を他の機関に委任した場合には他に別段の定めがない限り当該事項については委任された機関のみがこれに関する事務を行う権限を有し、社員総会といえどもこれに関する事務を行う権限を有しないものと解するのが相当である。ところで本件において定款(甲第一号証)第二二条に「諸規程の制定及び変更は評議員会においてこれを審議し議決する」旨規定されていることは当事者間に争がないから、諸規程の制定及び変更に関する事項はこれを評議員会に委任したものと認むべく、前記評議員選出規程の改正が定款第二二条にいわゆる諸規程の変更にあたるものであることは明らかであるから、右改正案については定款(甲第一号証)第二〇条第四号の場合即ち評議員会が会員総会に附議するよう決議した場合のほかは、会員総会においてこれを議決することはできないものといわなければならない。

しかるに、全証拠を精査しても、評議員会が前記改正案を会員総会に附議すべきものと決議したことを認めるに足る証拠は全くないから、前記改正案を可決した昭和三〇年八月五日の会員総会の決議は定款に違反し無効である。

四、(原告除名決議の効力について)

被告協会が昭和三二年二月二六日の評議員会で原告を「会員として不適当な者である」として除名する旨の決議をしたこと、及び右評議員会に出席した評議員がすべて、昭和三〇年八月五日の臨時会員総会において可決された、評議員選出規程の改正条項に基く手続によつて選出された評議員であることも当事者間に争がない。従つて、すでに判断したとおり右評議員選出規程の改正条項は無効であるから、それによつては評議員たる地位を取得しない。

よつて、右除名決議は評議員でない者の決議で無効であり、それによつては原告は会員資格を失わず、この点についての被告の主張は理由がない。

(昭和三二年一一月二〇日の会員総会における評議員選任行為の効力)

五、原告の資格喪失決議が、いずれも原告によつてその地位を争われている、目録(一)記載の者によりなされたことは当事者間に争がない。従つて、右資格喪失決議の効力の有無は、結局、右決議に参加した者が、評議員たる地位を有していた否かにかかるので、その点の判断を先にする。右目録(一)記載の者を評議員に選出したのは、理事長風間歳次郎名義で招集された昭和三二年一一月二〇日の会員総会であることは、当事者間に争がないのであるが、原告は、右風間が理事ですらなかつたことを理由に、その招集権限を争い、右総会における選出行為の無効を主張し、定款(甲第一号証)第一六条によれば「会議は理事長が招集する」ことになつているので、先づ右風間の資格の点から検討する。

右風間の理事就任が、昭和三〇年九月二日の評議員会の理事選任決議に基くものであること、及び右評議員会の決議に参加した評議員が、すべて昭和三〇年八月五日の臨時会員総会で可決された、評議員選出規程の改正条項に基く手続によつて選出された者であることは当事者間に争がない。

してみると、すでに判断した様に、右改正条項に基く手続によつて選出された者は、評議員たる地位を取得せず、これらの者による理事選任決議は無効である。従つて右風間は理事たる地位を取得せず、招集権限もないことになる。

よつて、前記昭和三二年一一月二〇日の会員総会は、招集権限のない者の招集にかかるものであるから、右総会でなされた評議員選任行為は無効であり、これによつて目録(一)記載の者は評議員たる地位を取得しないから、この点に関する原告の主張は理由がある。

(原告の資格喪失決議の効力)

六、昭和三四年四月二八日の評議員会において、被告の主張する様な、原告の資格喪失決議がなされたことは当事者間に争がない。しかし、右決議に参加した評議員が、いずれも目録(一)記載の者であることも当事者間に争がなく、同人等が評議員たる地位を有しないことは、すでに判断したとおりであるから会費滞納の点について判断するまでもなく、右資格喪失決議は無効であり、それによつて原告は会員資格を失わない。よつてこの点に関する被告の主張は理由がない。

(昭和三四年三月一〇日の理事選任決議の効力)

七、昭和三四年三月一〇日の評議員会において、目録(二)記載の者を理事に選任する旨の決議をし、右決議に基き同年四月九日その旨の登記手続がされたことは当事者間に争がない。しかし右評議員会の決議に参加した評議員が、すべて目録(一)記載の者であることも当事者間に争がなく、同人等が評議員たる地位を有しないことはすでに判断したとおりであるから、右評議員会における理事選任決議に無効であり、それによつて目録(二)記載の者は理事たる地位を取得しない。よつてこの点に関する原告の主張は理由がある。

(結論)

八、以上判断したとおり、原告の請求はすべて理由があるから、これを正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 長谷部茂吉 上野宏 中野辰二)

目録(一)

伊藤隆文 岩波雄四郎 梅沢彦太郎 江草四郎 太田道之 加藤金三 風間歳次郎 上本将 角川源義 河出孝雄 河中俊四郎 久保山雄三 小林茂 越元次良 近藤久寿治 小峰広恵 佐藤昂蔵 佐々木栄一 設楽得二 島田増三郎 下中弥三郎 須田頼幸 鈴木吉平 田中貫行 高島耕二 竹内久雄 土屋弘 中村仙一郎 長谷川光利 橋口景二 坂東恭吾 肥後栄吉 広瀬保吉 福田元次郎 茂木源策 吉田聖一 星野武雄 岡角次 杉浦栄三 前田芳雄 森北常雄 田中久四郎 河野敏男 岡本美雄 高橋徳治 三宅史平 森本光男 田畑弘 亀井部 今井竜雄 力富阡蔵 以上五一名

目録(二)

伊藤隆文 越元次良 田中貫行 坂東恭吾 田中久四郎 梅沢彦太郎 小峰広恵 中村仙一郎 肥後栄吉 力富阡蔵 上本将 鈴木吉平 橋口景二 前田芳雄 以上一四名

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